2008年6月24日

振りかえる勇気


 6月21日土曜日、WIFことWaseda International Festival 2008に行ってきた。WIFは僕にとってMEGA PEACEの出発点と言える場所だ。WIFの本番前日に、半年後に音楽祭をやろうと決心したんだった。

 今回で3回目となる春のWIF。1回目がこのblogのリンクにもある大原学さん(あんくん)と清野がWIFを立ち上げたWIF2006(ってかみんな写真若いよ。。。)。2回目が、僕自身がスタッフとして参加したWIF2007。そして3回目となる今回、WIF2008。僕は春は毎年見てきたのだけれど、観客→スタッフ→元スタッフという立場の変化が、どう感じ方を変えるのかなと考えながら会場へ向かった。

 春先には至る所で「今回のWIFはやばいんじゃないか」と囁かれているのを耳にした。体制が大幅に変わって、みんな不安だったんだと思う。それだけじゃなく、実際にメンバーの入れ替わりによる空気の変化も大変だったのだろう。ゆっぽんのblogを読んでいても、彼自身が当時の状況に苛立っている様子が窺い知れた。

 それでも彼らは信じて進んできたのだろう。最終日、僕は彼らに最高の笑顔を見せてもらった。

 WIFは「Family」という言葉をよく使う。たしかにその言葉の持つ暖かさのようなものが滲み出ていた。春先のひんやりした感じが嘘みたいに。外からは見えないところで、彼らは加速して熱を帯びていったのだと思う。ここまでリラックスして楽しめたイベントは、もしかしたらはじめてかもしれない。

 本番後のOB会では「WIFが10年続く前祝いで」と初代代表の大原さんが3年目の成功を祝っていたけれど、きっとそうなるだろうなと思わせてくれる1 日だった。僕が振り切ろうとしていたものがWIFにはあった。箱に入れて固く紐で結んで、心の奥にしまっておいたものを、あの舞台は思い出させてくれた。



 昨日、ひさしぶりにMEGA PEACEの練習に行った。来客との話が長引いて着いたのは終了5分前。僕は一曲も歌わないままアフターにだけ参加した。

 練習後のサイゼリヤで、とある女の子が僕の前に座った。去年のメガピを大いに手伝ってもらい、今年も頑張ってる子だ。なんだかいい雰囲気だったみたいだね、と話しかけたのだけれど、意外にも彼女の表情は硬く、口数は少なかった。いつも笑顔を絶やさない彼女にしては珍しいなと思って話を聞くと、その日に起こったいくつかの出来事に戸惑っているようだった。状況がうまく整理できないまま、不安で押しつぶされそうな顔になっていった。わっと泣き出しそうなくらい、彼女は目を赤く腫らしていた。

 そうした顔をする子を幾度となく見てきた。特にMEGA PEACEをやっている時にはたくさんあった。まっすぐで真剣な子ほど思いつめる。

 結局、店員がオーダーを取りに来たり電話がかかってきたりとで、その子としっかり話す時間のないまま終わってしまった。家に帰ってから、彼女のしんどそうな顔が焼き付いて離れなかった。



 おい俺!!!

 こういう時に何かできる男、

 「いい男」になるために、

 生きてきたはずじゃなかったのか!?



 さんざん悩んだ挙句、覚悟を決めて電話した。

 僕はこういう電話は極力しないようにしようと決めていた。自分のことすら満足にできていない自分が、他人のことにかかずらってる余裕なんてない。前を向いて誰よりも速く走り続けていくのが、僕が過去に出会った人々に対してできる一番のことだ。全力で走りはじめたら、トップスピードに限界は設けない。自己ベストを更新し続けることこそ、勝負している証だ。

 そう思って、僕なりにいろいろなものを引きずりながらしゃにむに前へと進んできた。個人でビジネスをやっていく以上、組織の中で生きていく奴より速く走らなきゃいけないと思ってやってきた。もっと生産的になり、たくさんのものを生みださなきゃならない。そのために後ろを振り返らないようにしてきた。たくさんの笑顔があるその場所は、生きるか死ぬかのビジネスの世界に身を置きつつある者にとっては、あまりにも暖かすぎるんだ。

 でも、WIFがくれた熱が僕に振り返る勇気をくれたんだと思う。

 電話口から聞こえる声は、もう既にいろんな人と話して、だいぶ落ち着いているようだった。話しぶりもいつもの彼女だった。僕は安心して、なんとかなるさ、といつものように言ってみた。ありがとう、と彼女は言ってくれた。

 別になんてことはない会話。彼女に何かをしたわけじゃない。でも、少し立ち止まって誰かに想いを馳せて、それを行動に移す。すると、その相手から心からの応答がある。それだけで、人は自分の存在を、他者を通して確認できる。それを彼女は教えてくれた。そういえば彼女とはWIFが縁で出会ったんだった。
 
 WIFを見終えて感じた、忘れちゃいけないものがあるってこと。人と人とのつながり。そこで生まれる暖かさ。それを忘れたら、何のために、誰のために走ってるのか分からなくなる。速く走ろうとしすぎて、僕は危うく転びそうだったのかもしれない。前を向いてるだけじゃ見えないものがある。忘れてしまうものがある。

 知らなかった。一歩踏み出すばかりじゃなくて、振り返るのにも勇気は要るんだ。

 時々は立ち止まって、それまで一緒に歩んできた人たちを振り返る。僕ら全員が同じ方向には歩めないとしても、そうやって見ることのできる笑顔は、生きていく中でかけがえのないものなのだろう。それなしには、僕らはきっと乾き、冷たくなってゆく。

 ありがとう、っていうのは僕のセリフだ。彼女との電話を切った後、僕は久しぶりにうきうきして事務所を出た。スーパーマーケットで酒とつまみを買い込んで、同居人みんなでコテツ君の24歳を祝った。こういう酒は、本当にうまい。



 メガピの練習を終えて学生会館を出る途中、去年のメガピ以来、久しぶりの参加だというある参加者に一日の様子を聞いた。彼は「去年のメガピみたいな暖かい空気っすよ」と言っていた。夕方に「なんか知り合い少ないんで来て下さいよー」と電話をくれた彼は、なんだか楽しそうだった。

 MEGA PEACEはいい感じで滑り始めたいきはじめたんだと思う。しんどいことはたくさんあるだろうけれど、きっとそれは乗り越えていけそうに見えた。7月6,7日、MEGA PEACE vol1.5 。まだまだ募集しているみたいだから、興味ある人は星野ちゃんなり戸塚ちゃんなりみっちゃんなりジョンなりあるいは僕なりに、遠慮なく連絡ください。一歩踏み出せば、きっと何か起こるから。


【フォト1】 下駄っぷ! この日、舞台の上にいたパフォーマーは、びっくりするくらい輝いてた。
【フォト2】 WIFの後、朝までOB会。なんだか寝付けなくて、僕は眠ったふりをして話を聞いてた。
【フォト3】 コテツ君24歳! Happy Birthday!

3 Comment:

匿名 さんのコメント...

真実はゆがめられて伝えられる
すべて主観で書かれた、限られたソースしかなければなおさら

大原 学 さんのコメント...

馬場ちゃん、寝たふりして聞いてたなんて知らなかった!! あの日もっと馬場ちゃんと話ができたらよかったと後になって考えてたよ。
「自分がトップスピードで走り続けることが結局はみんなのためになる」っていう考え方、すごく共感する部分があるよ。でも友達は「かっこいい自分」だけじゃなくて、「もがいてる(かっこわるい)自分」でもそこに居てくれるってことが嬉しかったりするんだよね。そういう風に生きれたら、すごく、楽になるなーなんて。
振り返らない勇気を持とうと思いつつ、オレなんて毎日振り返ってばっかだよ。大事な時間を忘れるのではなく、でも固執しない生き方をしたいもんだ。

Unknown さんのコメント...

学さん

途中でうたた寝してしまって、起きたら周りみんなガチで話してて、割り込む雰囲気でもなくしばらく聞いてました。こういう話、久しくやってなかったな、って。

>大事な時間を忘れるのではなく、でも固執しない生き方をしたい
両方を引き受け続けるのは、簡単そうで意外と難しいなと痛感してます。「ありのまま」でそのバランスを保てたらベストなんですけれど。かっこつけないのが一番かっこいいと思いつつ、なかなかそうなれない日々ですね。

そういう自分の中途半端さに毎日凹んでます。まぁでも、なんとか進んでいきます。先日は早く起きればよかったです。ちょっと後悔しました。すみません!次はゆっくり話しましょう!