2008年9月28日

「あたし彼女」

アタシ

トモの彼女

だからさ

ねぇ

キスしてよ

 という五行から始まる「あたし彼女」。生まれてはじめてケータイ小説なるものを読んだ。率直に言って、僕はすごく面白い小説だと思った。数十年後には消えてなくなるジャンルなのかもしれないが、この文体からしか生まれない味わいがある。すくなくとも、頭のいい人が脳みそを捻くり回して書いた小説よりも、ずっとストレートに心に刺さった。

 ケータイ小説ってのは巷で色々言われてるみたいだ。「恋空」も読まずじまいの僕はそれを語る資格もないのだろうが、よく耳にする「浅い」とか「深い」とか、作者はそんなことを考えずに書いたのだと思う。この文体が生まれた理由を分析することもできるし、不条理の哲学を含んだ小説だということもできるのだろうが、あまり興味がわかない。

 僕には、ただ単純に面白かった。共感するところもあったし、ふーんって思うところもあった。けれど、いわゆるそこらの「ブンガク」を読むよりは、ずっと意味のある時間だった。僕の心を揺らしてくれた。それで揺れ動く心なんて単純だねと言われれば、その通りだと答えるしかない。それが僕の感じ方なのだ。

 この小説を読んで僕が思い出したのは、レイモンド・チャンドラーの「タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない」という言葉(『プレイバック』(Wikiより引用))。これはすごく僕の好きな言葉で、書きたいことは山ほどあるのだけれど、それについてはまた後日書こう。

 「あたし彼女」(kiki著)を大絶賛するつもりもないけれど、もし時間が許すのなら一読してみるのも悪くないよ、と言っておきたい(受験生はダメだよ)。新しい文章の世界に踏み入れた感じが、僕をちょっと幸せな気分に浸らせている。 ※追記:この小説をパソコンから読む時は「FireFox」ってブラウザに「AutoPagerize」っていうアドオンを入れるとマウスホイールを高速で回しっ放しで読めます。


 【フォト】 濃いめの味わいあるビールが美味しい季節になってきた…!