2008年10月12日

満員電車

 次の目的地が示されていない電車と、目的地の示された電車がある。どちらを選ぶか? その理由は? 

 目的地が示されている電車に乗ることが推奨されるのは、その道が安全だと信じられているからだ。そうした道を選ぶことは、価値の変化がない時代には正しい選択だった思う。たとえ満員電車だとしても、次の目的地へ確実に届けてくれるのなら、すこし息苦しくても我慢していこう。僕らの親たちはそうやって生きてきた。

 でも、たとえば地震が起きてレールが途切れる時がある。あるいは、自分の進むべき目的地が分からなくなることがある。それが僕らの時代だと思う。だからって次の目的地の分からない電車に乗ろうとする人間はいない。その結果、目的地の示された電車にも、示されていない電車にも乗れないことになる。

 するとレールはなくなってしまう。八方塞がりで、未来が不安になってくる。「若者に希望がない」とか「3年で新人が辞める」とか言われたりするけれど、その一端にはこういう事情があるように思える。変化の時代において、レールを信じられなくなっているのに、大人たちは相変わらず満員電車に乗れという。

 アウシュビッツ行きの列車に詰め込まれるユダヤ人みたいな、そんなコースから僕は降りた。


 【フォト】 Krispy Kreme Doughnuts & John!