2008年6月14日

京都にて

 昨日の夜、新宿駅から夜行バスに乗って西へ向かった。高速道路を単調に走り続けるバスは妙に目が冴え、いつも到着間際になってようやく眠気がやってくる。

 このところ今ひとつ調子が出ない日々が続いていた。このblogも、1ヶ月くらい前にはじめた読書メモのblogも更新していなかった。年初から張りつめていた糸が緩んだのか、仕事の抱えすぎで力が分散してしまったのか。世一の言う「うにうに」という状態なのかもしれないと思ったりもした。

 けれど、留まるのはもういい加減やめにしよう。それは大学のはじめの4年間でやり尽くしたはずだ。バスのシートに身をもたせ、自分に言い聞かせる。ようやく僕は走りはじめたんだ。もう決してあそこに戻るわけにはいかない。


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 昨日の夕方、ある人からmixiを通してメッセージが届いた。「最近自分が冷めてて熱をもらいたいから飲みいこう」という内容だった。僕は友人のmixiやblogはすべて読んでいる。だからしばらく会っていなくても、彼が苦しんでいるのは知っていた。電話をかけると、すぐ駒場から早稲田まで来てくれることになった。僕は事務所で待った。

 彼と会うのは3,4年ぶりだった。前に会ったのは、たしか大学2年の時だ。あの頃は東大の理系に在籍していたが、今はロースクールで法律を学んでいた。

 今まで僕が出会ってきた人々の中でも、彼は飛びぬけて優秀な存在だと思う。普通にやってれば超一流の外資系コンサルあたりにさくっと入りそうな雰囲気。頭は切れて、行動力もある。人当たりもよく、かつ社会に貢献したいという意思まである。パーフェクトに思える男が、たとえ苦しむことがあるにせよ、僕に声をかけることに驚いた。

 彼はすぐにやってきた。せっかく声をかけてくれた彼に、僕が伝えられるものがなきゃいけない。そう思いながら、大隈講堂で、わっしょいで、Outsider7.7でと、場所を変え酒を変え飲み続けた。

 「絶不調でさ、元気を分けてもらいに来たんだよ」と彼は言った。それは事実なのだろう。mixiを読み、彼の話を聞けば、状況は分かる。

 僕はblogで「勝負し続けている」と語ったばかりだった。自分が伝えるべき熱を持つべきだと思っていた。そういう見栄もあって、僕は構えすぎていたのかもしれない。久しぶりに会ったという以上に、僕らの会話はぎこちなかった。

 絶不調だと語る彼は、しかし日々の生活において自分のスタイルを貫いていた。彼の目も死んではいなかった。約束されていた道を自ら離れ、踏み込んだ険しい道を苦しみながらも走り続けていた。彼はこともなげに言った。「やると決めたことはやる。それを取ったら俺には何も残らないからね」

 彼の言葉に全力でまっすぐに返す力は、今の僕の中にはなかった。

 「絶好調で、勝負し続けている」と語る僕の目は、濁りかけていたのだろう。これほどまっすぐに走っている時もなかっただろうと思っていた僕は、いつしかスタイルを失っていた。時間にも仲間にもチャンスにも恵まれているのに、しかし全力で走ってはいなかった。


 高速バスが休憩所で止まる頃には酔いも醒めていた。

 すこし落ち着いて自分に問う。あれだけ苦しんでいる彼が必死で走ろうとしているのに、勝負し続けていると語る俺は、いったい何をやっているんだ?

 話がぎこちなかったのは、彼が求めているものが実は彼にあり、僕が伝えようとしているものが実は僕の中にない、ということだったと思い至った。

 そう思うと情けなくて恥ずかしくて悔しくて、高速道路の休憩所のベンチで僕は叫んでいた。


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 昔より、少しずつ強くなっているのだと思う。耐える力がついたのだと思う。叫べば、翌朝には立ち直れる。

 少し前のエントリー(「ギークとスーツと想像力」)で「東のWASEDA・西のKYOTO」と書いた。いま、その京都にいる。目的は学生首脳会議なるものに出席するため。ウェブを通じて縁が生まれ、この団体の主宰者の方に声をかけていただいた。すこし遠いけれど、あえて一歩踏み出す。

 夜行バスを降りて鴨川を歩いて、四条河原町のネットカフェにたどり着いた。雨じゃないといいなと思っていたら、半袖ジーンズにサンダルじゃ寒いくらい、からりと気持ちのいい朝だった。シャワーを浴びて、この文章を書きえて、午前11時。そろそろ開場の時間だ。すこし鴨川を散歩したあと、ちょっくら暴れてこよう。


【フォト1】 鴨川
【フォト2】 高瀬川

2 Comment:

ktr* さんのコメント...

もっと勢いよく元気だしてください!

http://jp.youtube.com/watch?v=hjTehg5-eO4

Fつ さんのコメント...

金曜日はありがとう。