2010年4月5日

奇跡的な出逢い

道塾で使う教材を調べるため池袋のジュンク堂書店へ向かう。「どうやったら最短で合格できるか」を考えるのは精巧なパズルを解くようなものだ。そんなパズルを解いていると気付かぬ間に熱中し、あっという間に日が暮れた。

昼過ぎ頃から受験生と思しき人が増えてくる。手にとっては、棚に返す。それを繰り返す若者たち。その眼差しは真剣だ。彼らの視界の内には僕の本もある。そんな時、一人ひとりに声をかけてあげたいと思う。「その本を手に取って読んでみるといいよ!」。

大切なのは、出逢うべきものに出逢えるかどうか。振り返れば僕にとっても決定的な出逢いが幾つも積み重なり、今ここにいる。「それ」との出会いがなければ、今の自分はなかった。なぜ僕が「それ」をたぐり寄せられたのか。誰もができているわけではないだろう。自分の奇跡に感謝する他ない。

ネットが広がり個人の可能性は大きくなったかのように見える。だが、数万冊はあるであろうジュンク堂の参考書コーナーの中で感じたのは、自分の可能性をたぐり寄せることの難しさ。でも、希望がないわけじゃない。

ジュンク堂の参考書コーナーという世界に限れば、僕は彼らよりも多くを知っている。その場所から見ると、彼らの生きる視界の中には必ず「それ」がある。「それ」は彼らが手を伸ばすのを待っているかのように見える。大切なのは、無数にある候補の中から「それ」と出逢うことができるかどうか。

「それ」は押しつけられてもいけない。でも、偶然に任せているだけでは十分でない。その微妙なバランスを探りながら、彼らが出逢うべき何かに出逢える社会を作っていくこと。受験参考書だけではない。それはジュンク堂の参考書コーナーで解くよりも格段に複雑なパズルだが、それになら人生を賭けられるかもしれないと思った。